AIは単純労働を奪うか。弁護士や司法書士の仕事を奪うか。

AIイメージ

先日、最新のテクノロジーなどについての会話に参加する機会があり、そこで「工場なんかの単純作業をはじめ多くの業種がAIに取って代わられるのは間違いないよ」というような言葉を聞きました。

また別のところで司法書士の先生が「僕たちの仕事は10年後にはAIにとって代わられてるらしいから…」という怯えにも似た悲観的な言葉も聞きました。

近いタイミングでそのような話を耳にしたのですが、私なんかは(頭が悪いからかもしれないけど)そんなに何もかもがAIに取って変わられるとはどうしても思えない、煽りすぎなんじゃないの?でも実際どうなのかな、と感じました。そこで無知なりにちょっとだけ調べるなどして考えてみました。

工場の単純作業はAIに取って変わられるか

縁があって、大手化粧品会社の工場内を見る機会に恵まれたことがあります。

10mくらいのベルトコンベアの周りを10名くらいの従業員さんたちが囲んで、流れてきた洗剤のポンプに透明のプラスチックのストッパーをはめる人、それを手際よく3つ入りの紙の箱に詰める人、その先で段ボール箱にまとめて詰め、テープを貼る機械に入れる人、自動的に測られた重量を確認してコンテナに乗せる人、などと分かれて作業をしていました。

流れてきた商品が終わると蜘蛛の子を散らすように手際よく片付けてからまた別のレーンに集まって、今度は折れコン(折り畳みコンテナ)に入っているクリームのチューブをひとつづつレーンに手でセットして、それを透明なフィルムでラッピングして目視で検査をして箱詰めという作業に入られました。

そのフロアには8つくらいのそのようなラインがあって、すべてのラインがそんな感じでした。

それよりも上流には液体を容器に注入したりするフロアがありました。そこは髪やほこりが入らないように厳重に閉じられているフロアだったので入れなかったのですが、遠くから見た限りではやはりポイントごとに人が手作業をしていて、決して全自動で作られているという感じではありませんでした。

こういう工業製品はもっともっと機械で自動的に作られているものだと思っていたので、こんなに大きな工場でも、かなりの人数による手作業が行われていることにとても驚きました。

でもよく考えればこんなに頻繁に新製品が出て、容器の色や形が変わるような製品を扱う多品種少量生産の工場で、それ専用の機械を導入するとかあり得ないよね、人が柔軟に対応する必要があるよね、とも思いました。(だからこそロット生産…同じ施設を使いまわして類似性のある製品を作る方式…というやり方があるわけですよね)

AIが単純労働を駆逐する、工場が全部自動化される、なんて言っている人は、自分の使っているシャンプーや、コンビニで買ったサラダがどんな風に作られているかを知らないのかもしれません。(コンビニのサラダなんかは食中毒などのリスクを分散するためにわざわざ工場を分散して、超小ロットで生産されているそうです。かなり手作業で想像以上に労働集約的です。)

そもそも、今の時点でも導入率が20%とIOT導入がなかなか進んでいないことが中小企業の課題になっている模様です。

IoTの導入率
まず、現状のIoTの導入状況ならびに今後(2020年頃)の導入意向について確認する。現状においては、米国が突出して導入率が高く、プロセス及びプロダクトのいずれにおいても40%を超えている。日本を含め、他国については20%前後であり、米国とは倍程度の開きがある。

2020年に向けた導入意向についてみると、プロセス及びプロダクトの双方においてIoTの導入が進展し、全体の導入率は現状の2~3倍へ進展することが予測される。しかしながら、相対的にみると、日本は導入意向が低いことから、今後米国のみならず他国とも差が開いてしまう可能性が浮き彫りとなった(図表2-3-3-2)。

IOT導入率のグラフ

総務省:IoT・ビッグデータ・AI~ネットワークとデータが創造する新たな価値~

世界的にもIOTに出遅れている上に導入意向ですら40%ほどしかないこの状態からでは、ある程度のIOT化が進んだとしても、AIによる全自動化ってそんな簡単なことじゃないと思うのです。

AIは弁護士や司法書士の仕事を奪うか

弁護士や司法書士の書類作成業務などについても、よくAIに取って変わられるという話が出てきます。お医者さんの診断などもAIの方が正確なので誤診が少なくなるとかなんとか。

でもまあ、少なくとも今の時点では、まだそんなに目の前にAIの脅威はせまっていないみたいです。

前提として、現状では「司法書士の業務を代替できるAI(人工知能)」は存在しませんし、「司法書士資格を有さない人がAIを活用して司法書士の仕事をできるようにする」という法改正が検討されている、といったこともありません。

AI(人工知能)によって司法書士の仕事は奪われるか?

ただ、士業の資格を有する会社が何らかの手続きに特化した優れたAIを導入して、小売りにおけるアマゾンみたいな勢いで単純な書類作成業務なんかを根こそぎ持って行ってしまう、なんてことはあり得るかもしれません。投資した者勝ちですね。

人の感情を読み取る技術もかなり進んできているみたいだけど

「感性メディア技術」は、人と人、あるいは人と実世界の様々なモノや機械とのやりとりを捉えて、新しい価値を創りだすAI技術です。人の声や表情、ちょっとした仕草などの反応や行動を、画像や音声などを通して感知する「メディア技術」に、独自の情報処理アルゴリズムや、心理学・社会学・その道のプロフェッショナルなどの幅広い知見をかけ合わせることで、私たちの感情・気付き・気配りまでもAIが処理していきます。

進化を続ける人工知能~人の行動や反応から「気持ち」を汲み取るAI

技術的には、人の感情を読み取る技術もかなり進んできているみたいですが、このページのプロモーションを見る限りでは、視線や声のトーンでの限られた判断のよう。それも、多方面ではなく限定したーシーンでの利用が想定されているようです。でもあっという間に進歩していきそうですね。ただ、まずは販売や福祉の方面で活用されるようなイメージです。

私は弁護士さんや司法書士さんのお仕事は詳しくわからないんですが、これも製造業と同じく、ひとつひとつお客様の環境やら状況やら想いが違う個別の案件に、本当にAIが全部対応できるようになるのかな?と思うんですよね。

士業などの場合、それぞれ違うデリケートな状況を、クライアント自身が納得できるように聞き取り、判断し、提案をし、最終的に満足できる内容の手続きをするということが必要なのではないかと思います。

それらをディープラーニングで行う、ということなのかもしれませんが、ただ手続きだけで済む案件と、そうではない案件があると思うのです。

不動産にしたって、遺産相続にしたって、いろいろ外野がいて、その人たちにも納得してもらえるよう説得する、どうまとめてどこを落としどころにするか、みたいな場面もある気がするんですけど、そういうことは当面は人間にしかできないんじゃないでしょうか。人は、人に親身になってもらって安心する、という側面もありますしね。

そう考えると、そこまでできるAIがプラットフォームになるほど普及するとはあまり思えません。それこそドラえもんやら鉄腕アトム並みの感情的性能がなくては無理な気がします。

IT特区などを作り、その場所に限ればいろいろと超最先端なことも可能なのかもしれませんが、いまだに日本国内のETCの全車搭載が完了していないように、何もかもがAIで、みんなの仕事が奪われる、なんてことにはならないんじゃないかな。楽観的過ぎるでしょうか。

スマホが想像もつかないスピードであっという間に普及したように、あっという間にAIに席巻されてしまうのかな、という考えも頭をよぎりましたが、それにしては必要な投資が大きすぎるようにも思います。

でも一つだけ感じたことは、AIに対して投資ができるかできないかによって、同じような業務を行う企業間の格差がめちゃくちゃ大きくなるんだろうな、ってことです。…それがAIに奪われるってことなんですかね。やっぱりちょっと怖いですね。